絞り加工(その3)最適なプレス能力の割り出し方

これまでのシリーズ第1回・第2回では絞り加工時のしわや割れを抑制するために必要な「しわ押さえ力」と「適切な絞り回数」の求め方を解説しました。
シリーズ第3回目は「最適なプレス能力の割り出し方」について解説していきます。

絞り加工を行うプレス機を選定するためには、まず「絞り加工に要する力」及び「必要な作業エネルギー」を計算する必要があります。

適切なプレス機を選定するには

工程レイアウトが決定し、プレスの機種選定を行う際は、プレスの3能力である
圧力能力」「トルク能力」「仕事能力」を考慮して決めます。
絞り加工に於いては、絞り加工に要する力及び作業エネルギーを計算により求め、
その計算値よりも能力が高いプレス機械を選定する必要があります。

円筒絞りに要する力及び作業エネルギーの計算方法

ここでは、絞り加工の代表的な形状である円筒絞りの計算方法について解説します。

【円筒絞りに要する力】

円筒絞りに要する力の計算式は一般的に、下記の式が使われます。

Pd=π×dp×t×σb÷1000​

  Pd:円筒絞りに要する力(kN)
  dp:パンチの直径(mm)
     t:板厚(mm)
  σb:加工材の引張強さ(N/mm²) ※表3参照


表3 各種材料の引張強さ

【円筒絞りに要する作業エネルギー】

作業エネルギーは下記の式により求められます。

Ed=(Pd+Pad)×hd×Cd

  Ed:円筒絞りに要する作業エネルギー(J)
  Pd:円筒絞りに要する力(kN)
   Pad:しわ押さえ力
  hd:絞り深さ(mm)
  Cd:表4で示される係数 


表4 絞りに要する作業エネルギーの係数Cd

やってみよう

(問題)
径φ200のブランクより製品内径φ116※の絞り加工を行う際の絞りに要する力及び作業エネルギーを求めましょう。
材質はSUS (ステンレス) 、板厚は2mm、絞り深さ20mm、絞りダイRはR6とします。
※板厚は2mmのため、ダイス内径は116+(t2×2)=φ120になります。

(回答)(π=3.14で計算)
①  絞りに要する力  σb=700とした場合
Pd=π×dp×t×σb÷1000=π×116×2×700÷1000=510kN(四捨五入)

②しわ押さえ力 
Pad=An×pb÷1000より、Pad=17722×4÷1000=71kN(四捨五入)
(しわ押さえ力については「絞り加工(その1)最適なしわ押さえ力はどうだすの?」をご覧ください。)

③ 円筒絞りに要する作業エネルギー
絞り率:116÷200=0.58より係数Cdは0.77とする
Ed=(Pd+Pad)×hd×Cd=581×20×0.77=8947(J)(四捨五入)


つまり581kN以上の圧力能力、下死点上20mmで581kN以上のトルク能力を持ち、8947(J)以上の作業エネルギーを持ったプレス機※であれば、この製品の絞り加工ができます。
アイダのプレス機ラインアップでは、断続加工の場合、作業エネルギー的にはNC1-1100(2)で加工可能ですが、トルク能力が足りておらず、トルク能力も考慮するとNC1-1500(2)が最適なプレス機であるといえます。
(※ カタログに作業エネルギー、トルク能力の記載がない機種に関しては、アイダ担当者にお問い合わせください)

いかがでしたでしょうか?
絞り加工をテーマとして3回にわたり、最適な「しわ押さえ力」「絞り回数」「プレス能力」の割り出し方をご紹介してきました。

ご不明な点がございましたら、ぜひアイダにご相談ください!

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