各スライドモーションとそのトルク特性について
機械プレスにはいろいろなスライドモーションがありますが、ここでは各モーションの特徴と、そのモーションを生み出すスライド駆動方式、そして駆動方式の違いによるトルク特性について解説します。
■ 機械プレスの代表的なスライドモーション
代表的なスライドモーションであるクランクモーションとリンクモーション、およびナックルモーションの特徴をご紹介します。
リンクモーションとナックルモーションについて、もう少し詳しく説明します。
リンクモーションは、クランクモーションと同じSPMとした場合に成形域でのスライド速度がクランクモーション比で30~45%程度遅く、非成形域でのスライド速度が速い(上死点までの戻りが速い)という特徴があります。加工開始時の上型と材料の接触がソフトタッチになるため、金型寿命の向上や振動・騒音の低減に効果があります。また、成形域のスライド速度を同等とした場合、リンクモーションの方がクランクモーションより速いSPMを設定できます。その結果、生産性が向上します。しかし、リンクモーションは、クランクモーションに比べて材料供給や搬送に割り当てる時間が短くなるため、プレスラインとして期待するほどの生産性を見込めないことがあります。
リンクモーションの1種であるナックルモーションは、なべ底型のモーションであり成形域の時間を長くとれるため、コイニングやサイジングなど圧縮加工に適しているという特徴があります。一方で、なべ底型のモーションであるために材料供給や搬送に必要な位置までスライドが上昇するのに時間を要するため、生産性の面で不利になることもあります。
■ モーション別スライド駆動方式
次にそれぞれのスライドモーションを生み出すスライド駆動方式を示します。
■ モーション(スライド駆動方式)とトルク特性
加圧能力とトルク能力が同じでも、モーション(スライド駆動方式)の違いによりトルク特性(行程圧力曲線)が異なります。加圧能力と能力発生位置が同じ機械プレスのそれぞれのトルク特性を下図に示します。
クランクモーションとリンクモーションではトルク特性に大差はありません。しかし、ナックルモーションは、高いスライド位置での加圧能力が他のモーションより低くなっています。ナックルモーションのプレスは、コイニングやサイジングのような下死点付近で成形するような冷間鍛造加工には向いていますが、下死点上高い位置からの成形には不向きといえます。
加工対象製品の特徴に合わせて、適切なモーションのプレス機を選定しましょう。