プレス機に使用される潤滑油について

2022.11.07

前回はプレス加工時に使用する加工油についてご紹介しましたが、今回のブログでは、”プレス機に使用される潤滑油”について説明していきます。

潤滑油ってなに？

潤滑油とは、機械の接触部に生じる摩擦力や摩擦熱を減らし、摩耗を防ぐために用いる油の総称です。
プレス機械にも多く使用され、機械をスムーズに稼働させるために必要不可欠です。
ここでは、主に工場などの産業機械で使用される工業用潤滑油について記載します。

潤滑油ってどんな作用があるの？

潤滑油には以下のような作用があります。

・摩擦の軽減 : 油膜を形成することで摩擦を低下させる
・摩耗の低減 : 機械要素同士が直接接触するのを防ぎ、摩耗を小さくする
・冷却　　　: 摩擦熱を吸収し、焼付きを防止する
・密封　　　: 形成された油膜によって異物の混入を防ぐ
・錆止め　　: 金属表面に吸着することで錆の発生を防ぐ

潤滑油にはどんな種類があるの？

潤滑油には、さまざまな種類があり、それぞれ性能が異なります。
ここでは代表的な潤滑油について記載します。

・マシン油　　　：さまざまな機械の軸受や回転摩擦部分の潤滑油として用いられるのが
　　　　　　　　　一般的で、添加剤が一切含まれていない
・ギヤ油　　　　：ギヤ歯面の摩耗防止や摩擦低減、高い衝撃荷重からの保護のため、
　　　　　　　　　極圧剤を添加したものが多い　　　　　　　　　
・スピンドル油　：主に軽荷重高速機や小型の電動機、紡績機械などの高速で回転する部
　　　　　　　　　分に使用され、粘度・荷重ともに低い
・軸受油　　　　：機械の軸受の潤滑に用いられ、錆を防ぐ性質である防錆性がある
・油圧作動油　　：油圧装置の圧力媒体や油圧ポンプなどの作動油として用いられ、一般
　　　　　　　　　的に粘度が低い
・汎用・多目的油：軸受・ギヤ・油圧等広い用途に使用可能で、添加剤により性能を向上
　　　　　　　　　させているものが多い

潤滑油に記載されている“ISO VG 32”や“ISO VG 68”は何を意味しているの？

ISO VGとは、国際規格で定められた粘度グレードのことです。
ISO VGの後につづく数値は40℃における潤滑油の動粘度範囲の中央値によって定められています。
動粘度の単位は「mm²/s」又は［cSt］（センチストークス）で表します。
数値が大きいほどドロドロとした粘度の高い油となり、逆に小さいほどサラサラとした粘度の低い油になります。

Ｑ１．プレス機械にはどんな種類の潤滑油を選べばよいの？

Ａ１．プレス機械では軸受、ガイド、歯車など、多岐にわたり使用しているため、一つの性能に
特化した専用の油ではなく、多彩な性能を有した、汎用・多目的潤滑油を使用することが多いです。
アイダでは、プレスの機種や周辺機器において、それぞれの用途に合わせ、適切な油種、粘度
グレードを選定しています。また、指定油と同じ粘度グレードでも、添加剤の違いなどにより、
不具合が発生した事例があります。指定された潤滑油でない場合の故障は保証対象外となりますので、
使用箇所に合わせ、取扱説明書に記載された指定油より選定をお願いします。

Ｑ２．潤滑油の交換は必要？交換しないとどうなるの？

Ａ２．潤滑油は、ゴミや金属摩耗粉などの異物によるスラッジの発生、水分の混入、酸化劣化、
　　　添加剤の性能低下などにより、定期的な交換が必要です。劣化した潤滑油を継続的に
　　　使用すると、プレス機の軸受の焼付きや、摩耗し隙間が拡大することによる精度の悪化
　　　など、不具合の原因になる場合があります。