
打抜き加工(その2)打抜き力及び仕事エネルギーの求め方
打抜き加工シリーズ第1回目では、製品の寸法精度や金型寿命に大きく影響する適正なクリアランスについて解説しました。
シリーズ第2回目は「打抜き力および仕事エネルギーの求め方」について解説していきます。
適切なプレス機を選定するには
ブレークスルー
ブレークスルーは打抜き加工中の破断発生時、プレス機械に蓄えられた弾性エネルギーが一気に解放されることにより大きな振動と騒音を伴う現象です。ブレークスルーはプレス機械の破損の原因にもなるため、打抜き加工においては、ブレークスルーを考慮し、プレス能力の60~70%(機種、構造による)での使用を推奨します。
なお、高張力鋼板・ステンレス鋼などの高強度材料を加工する場合は、さらに低く設定する必要があります。
(関連ブログ:加工能力制限って、なに?)
打抜き力および仕事エネルギーの計算方法
打抜き加工を行うプレス機を選定するためには、まず「打抜き加工に要する力」を計算し、
その後に「打抜き加工に要する仕事エネルギー」を計算する必要があります。
【打抜き加工に要する力】
打抜きに要する力の計算式は、一般的に下記の式が使われます。
P=l×t×σs÷1000
P:打抜き加工に要する力(kN)
l:打抜き周長(直径×π)(mm)
t:板厚(mm)
σs:加工材のせん断抵抗(N/mm2)※表2参照

表2 各種材料のせん断抵抗
【打抜き加工に要する仕事エネルギー】
仕事エネルギーは下記の式により求められます。
E=P×t×fp
E:打抜き加工に要する仕事エネルギー(J)
P:打抜きに要する力(kN)
t:板厚(mm)
fp:食込み率 ※表3参照
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表3 板厚に対する食込み率の変化(軟鋼)
やってみよう
(問題)
径φ150のブランク打抜き加工を行う際の打抜き要する力及び仕事エネルギーを求めましょう。
材質はSPH、板厚は3.2mmとします。また本加工での最適なプレス機種を選定して下さい。
(回答)
① 打抜きに要する力 (表2より、せん断抵抗=280N/mm2とした場合)
P=l×t×σs÷1000=(150×3.14)×3.2×280÷1000=422kN
② 打抜きに要する仕事エネルギー
板厚=3.2mm 表3より食込み率は62%
E=P×t×fp=422×3.2×0.62=837.2(J)
最適なプレス機種については打抜き加工に要する力が422kNだとわかりました。ブレークスルーを考慮し、プレス圧力能力の60%での使用とした場合、プレス圧力能力は700kN以上、仕事エネルギーは837.2(J)以上を持ったプレス機*であれば、この製品の打抜き加工ができます。アイダのプレス機ラインアップでは、NC1-800またはNS1-800が最適なプレス機であるといえます。
(*カタログに仕事エネルギーの記載がない機種に関しては、アイダ担当者にお問い合わせください。)
いかがでしょうか?
次回のシリーズ第3回目(最終回)では、「ストリップ力」を解説していきます。お楽しみに!