【新人の方に必見!】プレス能力の3要素とは? トルク能力について
今回は、前回の①圧力能力につづき、プレス能力の3要素の中の「②トルク能力」を取り上げます。
トルクとは?
トルクとは物体を回転させる力を意味します。
身近な例として、
自転車に乗るときに、ペダルを足で踏んで回転させますよね?
このときのペダルを踏む込む力を想像してもらうとわかりやすいかもしれません。
さて、本題です。
プレスのトルク能力とは、
「下死点上●●mmのところで、圧力能力の発生が可能か」を表した能力です。
トルク能力に関係する構造部分は、
下記の図の青色で示される回転力を伝達する部位または部品(クラッチ、クランク軸、歯車など)で、
これらが耐えることができるトルクの最大値を指します。
トルク能力と加圧能力
下記は工程圧力線図と呼ばれ、トルク能力からみた「スライドの下死点上の位置」と「加圧力」の関係を示した線図です。
例として1100kNのプレスを示していますが、1100kNを発生できるのは下死点上5mmであることが分かります。(青線)
能力発生位置とは、圧力能力(公称能力)を発生できる下死点上の最も高い位置を指します。
また、この線図を見てみると、下死点上10mmの位置では約760kNです(赤線)。
お気づきでしょうか・・・?
能力発生位置より高い位置では加圧力が低下していきます。
クランクプレスは、どのクランク角度の位置でも軸トルクは一定ですが、
機構の特性上、加圧力は下死点に近づくにしたがって増加し、下死点付近で理論的には無限大の荷重が発生する可能性があります。(イメージ:紫の丸の箇所)
このため、能力発生位置から下死点までの間は仕様の加圧力以上の荷重が発生しないように、
過負荷保護装置を装備しプレスや金型の破損を防止しています。
「これから作る製品に必要な荷重は、プレスの圧力能力内に収まるから加工できる!」と思ってしまいがちです。
しかし、実は上記の例のように、下死点上の高い位置ではトルク能力から制限されるプレスの仕様をオーバーしているかもしれません。
また、トルク能力を超えた加圧力でプレスを使い続けると、
クラッチが滑りライニング(表面)が発熱し摩耗する、歯車が破損する、
クランク軸に過大なねじれが生じる等の不具合を起こす恐れがあります。
さいごに・・・
安全にプレスを使用していただくためにも
取扱説明書内にある工程圧力線図を確認して下さい。
今後、加工例を用いながらトルク能力について詳しく取り上げる予定ですので、お楽しみに!