
打抜き加工(その3) ストリップ力の求め方は?
打抜き加工を行うと、打抜いた材料がパンチに食いつくため、パンチから材料を剥がす必要があります。その際、剥がすために必要な力を「ストリップ力」と言い、金型内に設置するストリッパーのバネなどを選定するために算出する必要があります。もしもストリップ力を過小に設定して金型を設計してしまうと、パンチから材料を剥がすことが出来なくなります。逆に過大に設定すると、必要以上に大きいバネやガススプリングを設置することになり、オーバースペックとなって、コストが増加してしまいます。
こうしたトラブルや無駄の発生を避けるため、ストリップ力を正しく把握することが大切です。
ストリッパーの種類
ストリッパーの種類は主に以下の二種類に分かれます。

表1, 固定ストリッパーと可動ストリッパーの違い

図1, 固定ストリッパーと可動ストリッパーの違い
ストリップ力の求め方
この力は一般的には打抜き力※の2.5%~20%の間にありますが、概略値を求める場合には次の計算式が使われます。
【ストリップ力】
Ps=25 × l × t ÷ 1000
Ps:ストリップに要する力(kN)
l:打抜き周長(mm)
t:板厚(mm)
通常この力は打抜き力の5%以下になりますが、金型の切り刃の状態やパンチの潤滑、打抜く材料の材質、せん断面長さなどで変化します。
※打抜き力に関しては、打抜き加工(その2)打抜き力及びエネルギーの求め方をご覧ください。
やってみよう
(問題)
1辺の長さが80mmの正方形ブランク打抜き加工を行う際の、打抜きに要する力(ストリップ力)を求めましょう。
板厚は5mmとします。

(回答)
打抜き周長l=80×4=320mm
ストリップ力
Ps=25 × l × t ÷ 1000=25×320×5÷1000=40(kN)
以上より、ストリップ力は40kNとなります。
なお表1の通り、可動ストリッパーを使用する場合はエネルギーを消費します。
そのため下記計算式にて可動ストリッパーに必要なエネルギーを算出することで、より正確にプレス機を選定することが出来ます。
【ストリップ力に要するエネルギー】
E=Ps(ストリップ力)×ストリッパーのストローク
【補足】一般的に可動ストリッパーは必要最低限のストリップ力を考慮して選定されますが、材料が硬い場合などはブレークスルー対策として、あえてバネの力が大きいストリッパーを選定する場合もあります。ストリップ力を強くすると、パンチが抜けた瞬間に発生する力をストリッパーが受け、ブレークスルーによるプレス機や金型への影響を軽減できるためです。
さいごに
いかがでしたでしょうか。
打抜き加工をテーマとして3回にわたり、「適正なクリアランスとは?」「打抜き力及びエネルギーの求め方」「ストリップ力の求め方」をご紹介してきました。
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