偏心荷重線図について ②
以前に掲載した「偏心荷重線図について ①」では、荷重中心がプレス中心から離れる場合(偏心荷重の場合)は、使用するプレスの持つ特性により公称能力以下であっても総成形荷重に制限が出ることをお話しました。
プレスの総成形荷重制限を表すものとして偏心荷重線図をご紹介しましたが、
今回は「メーカーがどのような条件を考慮して偏心荷重線図を作成しているか」について解説します。
皆さんが偏心荷重線図を確認する際の参考になれば幸いです。
偏心荷重線図のポイントその1:プレス構造の限界(ポイント能力)
メーカーは、まずそのプレス機のプレス構造上の限界(ポイント能力)による制限を考慮します。(図1の①)
多工程成形の場合などで、荷重中心がプレス中心から離れると、2ポイントプレスの場合は荷重中心に近い方の
ポイントで受ける荷重の割合が遠い方のポイントに比べて大きくなります。
荷重中心位置により発生する各ポイントが負担する荷重は、ポイント能力(2ポイントの場合、公称能力の1/2)を超えることはできません。つまり上記の場合、左ポイント荷重が1500kNを超えたため、総成形荷重がプレスの公称能力(圧力能力)より低くても、この成形はできないこととなります。荷重中心がプレス中心から離れるほど、成形可能な総荷重は下がってしまいます。その場合は、荷重中心をプレス中心側に寄せるか、公称能力がもっと大きいプレス機を選択する必要があります。
偏心荷重線図のポイントその2:プレス機の精度への影響
続いてメーカーは、そのプレス機の精度への影響による制限を考慮します。(図1の②)
ポイント能力による制限だけでは偏心荷重によるスライドの傾きが考慮されず、プレス機の精度の悪化や金型の破損、スライドガイドの焼付きなどが懸念されます。
そこで各プレスの特性や対象製品に応じて、JISで規定されている静的精度(平行度)を目安として制限を設けます。
例えば、精密プレスの場合は平行度の悪化を最小限にしたいのでJIS1級程度に、汎用プレスの場合はJIS2級~3級を目安に線図を作成しています。
偏心荷重線図の作成過程についてまとめたものを以下に示します。
さいごに
いかがでしょうか。偏心荷重線図から求められる荷重の許容値以内で成形したとしても、偏心荷重はプレス機の精度・金型に悪影響を及ぼすため、極力少ない状態で使用することが望ましいといえます。
余裕をもった使い方をしましょう。