よくあるご質問 ~プレス加工油について

今回は「プレス加工油」についてのよくある質問について、Q&A形式で取り上げていきます。
新人の方にもおすすめですので、ぜひご覧ください!


Q1:プレス加工油について教えて下さい。

A1:プレス加工とは金型の間に素材をはさみ、強い圧力を加えることで、素材を金型の形に成形する
     ことです。素材は金型に強く押し付けながら成形を行うため、成形内容によっては、摩擦により
     金型やワークに傷がついたり、ワークが割れたり、摩擦熱による焼き付きが発生する事があります。
    よってプレス加工を行う場合はプレス加工油を使用する場合が多く、油を素材表面または金型表面
    に塗布し、金属表面に油膜を作り摩擦を減らすことにより、金型やワークを傷や割れから保護します。
    プレス加工油の種類には油脂潤滑材、水溶性潤滑油、乾性潤滑被膜、プラスチックフィルムなどがあり、
    使用用途により使いわけています。



      プレス加工油には、被加工材や加工方法、その他要求性能に合わせて数多くの種類があります。
   大別すると不水溶性(油性)タイプ、水溶性タイプ、固体潤滑剤分散タイプがあります。各タイプを
   ベースに、二次性能や環境性能を満たす様、原料の選定や添加量の調整を行っています。


Q2:プレス加工油の環境対策について教えて下さい。

A2:プレス加工油だけでなく、プレス加工後の製品の洗浄液(溶剤)については、その使用や廃棄に
   際して環境に配慮する必要があります。 プレス加工油には用途に応じて様々な化学物質(添加剤)
   が含まれていますが、  特に塩素系極圧添加剤を含む加工油には注意が必要です。
        塩素系極圧添加剤は焼付き防止に優れた性能を発揮するため、プレス加工油に限らず多くの加工油
   に使用されてきましたが、廃棄後の焼却過程でダイオキシンの発生が懸念されています。
     また、プレス加工後の洗浄液(溶剤)にはオゾン層を破壊する物質が含まれている場合があります。
   このため、近年では摩擦を軽減するための特別な添加剤を配合した非塩素系加工油や、
   プレス加工後の洗浄を省略または簡略するために速乾性や揮発性の加工油が推奨されています。


Q3:4.5mm厚SPCCの複数工程円筒絞り(モーターハウジング)に塩素系の油剤を
   使用しているのですが、絞り側面に錆が発生することが課題として挙げられ
  ます。 改善できる加工油はありますか?

A3:塩素系の加工油は、塩素により化学反応を促進することにより、錆びやすくなります。
  プレス加工油G-3641(日本工作油)は、非塩素系の油となりますので錆びにくく、 絞り加工に
  於いては、塩素系の油に相当する性能を持つため、この油に変更することにより、成形性を損ねる
  ことなく絞り側面の錆が全くなくなり、不良率が大幅に改善しました。


Q4:0.5mm厚SUS304の順送抜き及びシゴキ曲げ加工において非塩素系油剤を
  使用していますが、ベトツキのせいでスクラップのカス上がりや金型汚れが
  課題として挙げられます。  何か改善方法がありますか?

A4:非塩素系プレス加工油G-3008D(日本工作油)は、添加剤の配合を工夫することに より従来の
  性能はそのままで低粘度な加工油となります。この油に変更して粘度が低くなったことにより
  カス上がりの問題が解決し金型の汚れも少なくなり、作業効率が大幅に改善しました。


Q5:1.0mm厚SECCの順送絞りや打抜き加工(エアバッグ部品)に乾燥タイプの
  油剤を使用していますが、夏場は乾きが早すぎて潤滑性能が落ちてしまい
  ます。何か対策はありますか?

A5:乾燥時間の長いG-6376F(日本工作油)を使用することで、後工程まで乾燥せず加工油が残るように
   なり、金型寿命が延びると共に乾燥の際の臭気も改善しました。但し乾燥後の油分の残留はわずかに残ります。


Q6:プレス加工油のプレス機への影響について教えて下さい。

A6:プレス加工油のプレス機械への影響について整備された資料はありませんが、 塗料、パッキンなど
  樹脂類やゴム類に対する影響については過去からいろいろな形で述べられており、 樹脂やゴムは
  油剤成分に触れると形状が変化することが確認されています。
     経験的には油剤成分と樹脂成分の相溶性が良いほど変化が起きやすいと考えられます。 ポリカーボネイト
  やアクリルゴムは耐油性が低く、油剤が付着した場合は膨潤や白化することがあります。
    また、ポリカーボネイトは耐衝撃性に優れプレス機の安全ガードに使用されることが多いですが、
    油剤が付着した状態でプレス加工部品やスクラップと接触した場合には割れが生じることもあります。


Q7:プレス加工油に水溶性加工油を使うときの注意事項はありますか?

A7: 水溶性加工油がプレス機や付属装置の潤滑油に混入すると、 潤滑油が劣化し機械の作動時の発熱や
   かじりなどの重大な不具合を起こす虞があります。また、錆の発生を招き、機器の寿命低下を招きます。
   水溶性加工油を使うときは、使用量の制限や油水分離装置の追設等の対策が必要となります。


水溶性加工油混入により発生した錆


油水分離装置の製品例


Q8:板材への塗布にはどのような方法があるでしょうか?

A8:手作業による刷毛塗りや霧吹きを除くと、最も普及している方法は3つあります。
    ①滴下(点滴)式 
    ②給油ローラー式 
    ③自動スプレーガン式
 
    上記それぞれに長所、短所がありますので、プレス加工に求める条件に合う方法を選ぶことが大切ですね。
    塗油装置の詳細については下記ブログで取り上げています。
    プレス加工になぜ潤滑は必要?(ルブテック株式会社様 協力)


いかがでしたでしょうか?
Q3~Q5は、日本工作油㈱様ご協力で作成しました。
油種選定や環境対策その他詳細については、専門の油脂メーカーへお問い合わせください。

次は、"プレス機に使用される潤滑油について"取り上げていきます。
お楽しみに!

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