加工荷重とプレス選定の考え方

加工荷重とプレスの選定についての話題です。

1000kN(100t)の加工をするためにはプレスの公称能力は1000kN以上のものを使用する必要があります。
皆さんもお分かりのように1000kN未満のプレスで1000kNの加工を行った場合は加工ができない(製品にならない)ですし、最悪の場合はプレスに重大なダメージが発生します。

このような状態にならないためには、
一般的にはプレスの公称能力に対して加工の荷重が70%程度までのプレスを使用することが推奨されています。

その理由は、量産加工時の荷重のばらつきや設定ミスでの荷重UPなどを想定しているからです。
一般的な破断を伴う"打抜き加工"の場合は、打抜き完了時にいきなり荷重がゼロになりスライドが急激に下側に移動するブレークスルーによる影響を考えて、
打抜き荷重の50%~60%以内での使用を推奨しています。

しかし、加工時の荷重は、いつも下死点で発生するとは限りません。
加工の内容によっては、荷重が発生するスライド位置が異なります。

代表的な加工法での"スライド位置と荷重の関係"を示した模式図を下記の図に示します。


図1 打ち抜き加工のスライド位置と荷重の関係


図2 曲げ加工のスライド位置と荷重の関係


図 押出加工のスライド位置と荷重の関係

図3 押出加工のスライド位置と荷重の関係


図4 絞り加工のスライド位置と荷重の関係


図5 つぶし加工のスライド位置と荷重の関係

上記の5つの図のように最大荷重が発生するスライド位置が、加工法により大きく異なります。

機械式のプレスでは、発生できる荷重が下死点上のスライドの位置により変化します(プレスの3要素:トルク能力)ので加工の違いによる、
最大荷重の発生位置を理解してプレスの選定を行う事が必要です。

次の図6に加工の荷重が800kNでの曲げ加工と絞り加工を行う場合の1000kNプレスのトルク能力との関係を示します。


図6 曲げ加工と絞り加工でのプレスのトルク能力との関係

図6 曲げ加工と絞り加工でのプレスのトルク能力との関係

上の図6で表す例では、曲げ加工は1000kNプレスでは、トルク能力線図内のため加工は可能です。
絞り加工の場合は、トルク能力線図の外側になるため1000kNプレスでは能力が不足します。もっと大きな能力のプレスが必要になります。
また下死点上の高い位置から加工が開始する場合は、作業エネルギー(プレスの3要素:仕事能力)の確認も必要です。

プレスの3要素のトルク能力と仕事能力についてはまたの機会に説明します。


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